音の省略

「クローズド・ボイシングでは、音が固まってしまい聴きにくくなる」という話をしました。でも、だからといって常にオープン・ボイシン グで弾くわけにはいきません。コードばっかりうるさくなっちゃいますからね。

で、そういうときは、コードの構成音のうちいくつかを省略してしまうことができます。

例えばベースがいるバンドでは、ルート音を省略してしまっても構いません(実はこれ、前章の「9thコードの転回」の話のとき、こっそりやってしまっています(^^;)。転回後の楽譜を確認してみ てください)。CM7の場合、ベースがCを弾いているなら、コードは「ド」を省略して「ミ・ソ・シ」でいいのです。

次の省略候補は第5音。調性に関わらないからです。

逆に省略しにくいのは第3音で、これはメジャーとマイナーの分かれ目になる大切な音です。同じく、テンション・ノートも省略できませ ん。これを省略しちゃったら、普通のコードに戻っちゃうでしょ?

・・・が!あえて第3音を省略して、調性をあやふやにしてしまうなんていう高等テクニックも存在します(この場合は、第5音は省略しな いほうがいいです)。ベースが入っていないイントロ部で使うと、(第3音をフレーズに含んだ)ベースが入ってきた途端に調性がはっきりしてドラマティック だったりもします。

先ほどの「ミ・ソ・シ」の場合も、ベースが入って来ないとEmなのかCM7なのかわからず、調性があいまいになります。しかし、ベース が「ド」と入ってきた途端に調性がはっきりし、オシャレ度合いもグッとアップします。

上の例では、最初のイントロでは「F−G−C」に聴こえます。続けて入ってくるベースは、素直にそのまま「F−G−C」を弾いていま す。

しかし、もう一度ベース無しの「F−G−C」に戻り、再びベース音が入ったとき、コードは「Dm7−Em7−Am7」に変わっていま す。ベース音を省略したため調性があいまいになり、「メジャーだと思わせておいてマイナー」になるのです。「素敵な裏切り」を演出できますね(笑)

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