楽器の特性を知る(ガイドライ ン・I)

もし生楽器を志向するアレンジをしているのであれば、自分が使っている音を出している楽器がどのような特性を持つのか、きちんと把握し ましょう。

以下は、様々な楽器を再現するときの簡単なガイドラインです。


<ドラム>

バスドラ・ペダルハイハットを除く、手で叩く楽器(スネア、タム、シンバル、etc)を、3つ 以上同時に鳴らしてはいけません。(手が二本しかないんだから、そんな演奏は不可能でしょ?)。

これは、ドラムにフィルを入れるときによくやる失敗です。例えば「ハイハットで8ビートを刻みつつフィルインを入れる」という動作は、 生ドラムでは不可能です。この場合、ハイハットは休みにするか、ペダルハイハットに切り替えるかしなければなりません。

タイミングについてはあまり極端に変えず、基本はジャストで構わないと思います。それよりも大事なのはベロシティー(強 弱)です。16分音符を連打するとき、すべてを同じベロシティーに設定するととても機械的になってしまいます。強弱にメリハリをつけて、グルーブ感を出し ましょう。ここにその例があります。


<ベース>

通常の4本弦ベースでは、最低音はEです。それより下の音を使ってはいけません(これはギ ターについても同じです)。必要に迫られてキーを下げなければならなくなったときなどは、最低音がEを超えないように気をつけてください。

ま た、早いフレーズを演奏させるときには、特に音の強弱に気をつけてください(次々章でお話します)。ギターと比べてネックが長く、弦が太いベースでは、あ まりに細かいフレーズは左手の移動距離の長さと弦を弾く強さも相まって、フレーズが均一のボリュームで出せない場合があるのです。

ベースは弦楽器であるとともにリズム楽器の一部であり、ドラムと一緒にグルーブを作り出す大切な楽器です。音が入るタイミングはもちろ ん、音を切るタイミングにも十分気をつけましょう。ま た、ベーシストは音を止めるためとリズムを刻むために、意識的・無意識的に弦を押さえることがよくあります(これを「ゴーストノート」といいます)。この 「プッ」という音が入ると、グルーブ感が格段に増しますので、意識してみてください。以下は、その音が入った例と入っていない例です。違いを確認してみて ください。

入っていないもの

入っているもの


<ギター>

非常に様々な奏法があり、サックスと並んでコンピューターで再現するのが最も難しい楽器の一つです。奏法のバリエーションについては、 僕の昔のバンド仲間が作っているこの ページを 参考にしてください(他人任せ)。これだけの奏法を完全に再現するのは、かなりの労力が必要です。例えばチョーキング一つとってもピッチベンドでなんとか なりそうに思えますが、実際のチョーキングはピッチが上がるとともに音質が若干軽くなる(倍音成分が増える)ので、ピッチベンドするだけでは不自然に聴こ えてしまうのです。ある種の奏法は、再現不可能と考えても良いでしょう。

ベロシティーについては、特にソロなどの場合、ある音のベロシティーをあえて極端に下げることで、人間くさい、いわば「ミス」を演出す ることができます。

コー ドを演奏するときには、ピアノのようなクローズド・ボイシングを使ってはいけません。ギターでは、ピアノが通常やるような音の配列でコードを演奏すること はできないからです。ギターがコードを鳴らすときに、6本の各弦がどのような音を出しているのかは、同じく上で紹介した「ロック・ギタリスト養成講座」のここで研究してみてください。


<ピアノ>

ピ アニストが意外によくやる間違いは「コードを弾くとき、左手でベース音を弾いてしまうこと」です。ベースが存在するアレンジでは、この左手のベース音は (演出上、必要な場合を除いて)邪魔な音になってしまいます。それよりも、左手でコードを鳴らし、空いた右手でオブリガートをつける方向に考えたほうが良 いでしょう。その方が、音楽全体の広がりが良くなります。

弾けるフレーズは積極的にリアルタイムで弾きましょう。ミスタッチは後で修正できます。気にしないで、弾いちゃいましょう。
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