音は"みる"もの
それでは良い音を目指して何をしてゆくべきなのでしょうか?それは「音は"みる"ものだ」という考え方を持つようにするとよいのではないかと思います。

"みる"は「見る、観る、診る、看る、視る」と意味要素の全てを使います。ここでは便宜上"見る"を使いますが、あらゆる"みる"を含むことに気をつけてください。音を当たり前に聴こうとするだけでは、なかなか音の良さを捉えることは難しいのです。

音を作るに当っては人間の感覚の大半を占める視聴覚の両方を使って、良い音であるか評価し、修正してゆくことが必要です。聴きなれた好きな楽曲も聴くので はなく、"みる"ようにしてください。プロのミキサーの世界では「音は見るもの、画は聞くもの」といわれます。実際にミックス作業中のミキサーがアシスタ ントに対して、「コーダのところ、もう一度見せて」というように現場でも見るという言葉を多用します。

楽曲や効果音でも何でもそうですが、音を聞いたときに視覚に落として捉え直すという訓練が良い音を作るうえでのもっとも重要な要素です。人の音も自分の音 も見るようにしてください。音を見るということがどれだけ重要なことなのかは、コラムを進めて行くにしたがって、ご理解いただけるのではないとおもいま す。本コラムは常に「音を見る」という背骨が入っています。

余談ですが、「音を見る」ことのすごさが書かれたドキュメンタリーがあります。ロバート・カーソン著 「46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生」ノン フィクションです。"見るとは何か"を考えさせられました。そして、なぜ現場で「音を見る」という言葉が自然に多用されたのかがよく分かりました。
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