それでは、音をみてみよう その 1
前章では「音をみる」というお話をしました。そして「みる」べき切り口は複数存在しうるということ にも触れています。

実際に例を挙げて考えてみましょう。

次にお聞かせするのは波音で何も手を加えていないオリジナルとします。

ここでどんな情景が浮かびますか?

砂浜ですか?昼間ですか?晴れていますか?海ですか?距離は?・・・・音を聞いてご自分の立っている場所を想像してください。これがどんな場所で、どんな 波なのかはそれぞれ聞く人の経験や、そのときの気分によっても変わります。音楽も同じですね。ですから、この音がどう聞こえるべきかの正解などは存在しえ ません。しかし、この音を選んだ私はやはりこう聴いて欲しいという情景を持っています。更に言えばこの情景を私が持ってい無ければ、つまり私が頭の中に 「見て」いなければ、そもそもこの音を選択していません。意図が存在するということです。これを私としては伝えたい情景として「見ている」とします。

次の音を聴いてみてください。


前のSEにEQとコンプレッサを当てたものです。私の伝えたい情景をより確実にするために加工してみました。少しわかりにくいものかも知れませんが、あな たにとって、どのような情景に変わったでしょう。場所は?時間は?天候は?季節は?・・・あなたとっては見えるものが私の選択したオリジナルという基準か ら逸れてしまってったはずです。

更に次の音を聞いて見ましょう。


オリジナルに対して別のEQをかけました。同じように情景が大きく変化していませんか?あなたには何が見えますか?

EQやコンプレッサの使い方で、随分と情景がかわることに注目してください。これは楽曲に対していうと、楽器の音そのものをどのように加工するかで伝えら れるものが変わってしまうということです。こう「見せたい」というものが、聞く人へ別のものを「見せて」しまうことになってしまいます。

最後の音です。


私は自分の伝えたい情景のために、オリジナルに対して音を付け加えました。目的はもう少し場所や時間、天候を明確にしておきたいからです。またオリジナル からみて違った情景にはなりませんか?

楽曲で考えると音の組み合わせを足す、変えると、「見えるもの」が変わってしまうということをあらわしています。

更に要素が加えられた事で音の空間が変わる、変わって「見える」ということに注意してください。

ミッ クスにおいては、このように音自体と構成要素のバランスによって、見せたい物をより明確にすることの積み重ねであることを理解してください。音を並べるの がミックスではありません。バランスはどう取ればよいのか?その前になにを見せたいかの意図を自分の中に「見て」取り掛かるようにしなければなりません。 意図無きミックスは聴く人へ何の感動ももたらし得ないのです。

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