コンプレッサ(1)
ダイナミックレンジを制御するもので、一般にはそれを小さく〜狭くするものです。ダイナミックレンジを広くするものは「Expander(エキスパンダー)」といいますが一般的なものではありませんので割愛します。

音の立体感のうち、コンプを掛けると前後感に関連し、一般には音を前に出す作用があります。

もう一つは「奥に置いても、聞こえるようにする」使い方をすることです。これは対比できる背景音があるときに使い分けできるものです。

コンプレッサをかける方向性がいくつかあることを理解してください。注意しなければならないことは、対比するものが無いと前に出た効果が薄れる点です。背景音があって初めて前に出せるという効果が出ます。

トータルコンプは背景も含めて前に出してしまうため、かけ過ぎると立体感・空間が狭められる方向です。一般にダイナミックレンジの狭い音は、「芝居の書き割り」のように見えるはずです。

例としてピアノのソロを16ビットで収録したものと24ビットで収録したものを見てみると、24ビットの方がピアノの実体がそこにあるかのように見聞こえ し、16ビットの場合は、ピアノの実体が薄っぺらい書き割りのように聞こえるはずです。もちろん16ビットでもダイナミックレンジが有効に活用できていれ ば、実物のピアノを見聞きすることができます。それを優秀な録音と言うわけでですが、例えばクラシックピアノのCDをよく見聞きしてみてください。

ピアノが書き割りに見えるでしょうか?それともピアノの実体がそこに見えるでしょうか?ピアノの物理的大きさはどのように感じますか?ピアノが見えなければ、天井の高さを探してください。ダイナミックレンジを有効に活用している録音は、天井の高さもきちんと見えます。

別の使い方です。コンプを掛けることでリバーブ感を出すことができます。

楽器、とくにドラムやピアノについて、上手にサンプリングされたものであれば、コンプを掛けると「響き感」を相対的に向上させることができるのでリバーブ をつけたように聞こえます。実際にドラムとピアノのサンプリング音源を使って、コンプをかけてみましょう。コンプの深さによって前後感が変わるのが見える と思います。そして他の楽器(例えばベース等)と合わせた瞬間に、リバーブ感が突然現れたりします。こういったところを徹底的に見聞きしてください。

楽器の立体感、すなわちドラムセットやピアノの形が見える範囲でのコンプのかけ方をまずは研究してみてください。書き割りの楽器を作り出してしまったり、 全ての楽器が横一直線に並んだような、書き割りにならないように注意し、すべての楽器にコンプを掛ける必要が無いことを掴んで下さい。

コンプを要する楽器は何か?を見極める訓練は、上記のように優秀なクラシックピアノのCDをよく見聞きし、単体のドラムセットやピアノにコンプをかけてど のように見えるかを研究することです。多分、単体のピアノにコンプを掛けるのは相当に訓練が必要で、調整も微妙になるとおもいます。この時、コンプモデ ル、すなわち例えば真空管のシミュレーションといった機能が使いこなしのポイントになることに気が付くはずです。

もちろん基本パラメータである4つの調整がどのように左右するか見てみましょう。音を聞かないで、コンプをかけて”見る”とどうなるかです。

以下はヒントです。

楽器に関わらず基本設定はスローアタック(100ms以上)、ファーストリリース(5ms)、圧縮比4:1以内とし、まずはスレッショルドの調整で勝負してみてください。

次にアタックの調整です。アタックタイムを長くする短くするは、対象の音で見え方が全く変わるので、「眠くなるほどゆっくり変化させながら」追っかけて行ってください。

リリースは、「次に来る音がどのように聞こえるか」に注意して追い込みます。コンプの肝はアタックタイムとリリースタイムにあります。

前に出したいのか、リバーブ感を出したいのか、それとも単純にピークを引込めたいのかを使い分けられるようにしてください。

一般にリミッタ(通常8:1以上)として使う場合はスレッショルドが高め(浅め)で、頭が少し叩かれるくらいでレベルを平滑化してください。

リミッタとして圧縮比の大きな設定を要する場合は、スレッショルドが低く〈深く)設定されていると、初心者が陥りがちの息つき現象を招きます。この時は圧縮比を下げるか、スレッショルドを上げる、あるいは入力値を下げるなど調整をしてください。

また、別の手として、”コンプ/リミッタの2度がけ”という方法があります。

一旦、リミッタで浅めに抑えてから、更にコンプをつなげて、音圧を前に出すためにコンプを掛けるという方法です。いきなり1つのコンプで処理しようとしないで2つに分けるという方法です。

コンプレッサにGR計がついているとわかりやすいですが、いきなりこのGR計がガンガン動いているほど掛けるのは相当の手練でなければ、上手く行くことは少ないと考えてください。もちろん意図的に合っているのであれば反則という事ではありません。

「コンプレッサ/リミッタを掛けると低音が上がる」というのがありますが、技術的には上がっていません。「そのように見える」だけです。ですが、実際に低音が上がったように聞こえるので、必要に応じてイコライザで補正してください。
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