コンプレッサー(2)

さて、このコンプ。実はとても大切なポイントがあります。それは「元音がレベルを超えてから音量の抑えこみが始まる」ということです。 つまり、元音がレベルを超えた瞬間の音はそのまま出力され、その直後(Attackで決めた時間後)にレベルの抑えこみが始まってレベルが下がる、という ことです。レベルの抑えこみは、Releaseで決めた時間まで続きます。

アナログ回路なら、これは当たり前に理解できますよね。だって、コンプはこれからどんな音が入ってくるか知らないんですから。入ってき てから気がついて、慌てて抑えこむわけです。

で、このデジタルなご時勢、コンプは音データを先読みして、元音が入る前から抑えこむように進化して・・・いるかというとそうではな く、相変わらず「入ってから抑えこむ」のです。

なぜでしょう?

それはコンプの主要な使い方が「レベルの調整」だけではないからです。アナログコンプの、ある意味では「欠点」だったこの特徴は、むし ろ「音の粒を立てる」という目的のために有効に使われたのです。

下の波形を見てください。

これはバスドラムの音ですが、上が元音、下がコンプをかけた音です。コンプをかけた音のアタック部分が鋭くとがっているのがわかります ね。これにより、音のアタック部分が強調され、なんとなくだらしなかった音のエッジが立つのです。

実際に音を聴き比べてみましょう。最初の2発が元音、続く2発はコンプをかけたものです。なお、上の図では分かりやすくするために極端 にコンプをかけていますが、そのせいで、バスドラのリリース部分に残っている低域が削られてしまったので、コンプをかけた後に100HzあたりをEQで持 ち上げています。

では、この目的でどこに使うのか・・・基本はビートのアタックが大切な楽器・・・ドラム(特にバスドラ)やベース等です。そして、すべ てをミックスし終わったあと、全体にコンプをかけて音圧を調整するという方法も定石です。これを「トータルコンプ」と言います。

ほら、出てきましたね。「音圧」。以前の項でお話した「音圧を上げるのは、音量を上 げることとは別だ」という話は、ここで効いてきます。音量をひたすら上げていっても、全体的な音量にバラつきがある場合、曲の音圧は上がらないのです。 トータルコンプをかけることでビートのエッジが立ち、さらに音楽全体の音量を一定レベルに保つことができるので、音圧の高いサウンドを作ることができま す。

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