VUメーターとピークメーター

ミキシングの工程において、絶対にやってはいけないことの一つが「レベルオーバーによる音割れ」でしょう。その次にやってはいけないことが「全体の音量を小さくしすぎたことによる、ダイナミックレンジの減少」でしょう。

つまり、全体的な音量は大きすぎても小さすぎてもダメなわけです。難しいですね。

では、音量を最適な状態にするにはどうしたらいいのか?「前の曲もこれくらいの大きさだったから大丈夫」なんてのはダメですよ。音量とか音質とかってのは、その日の体調とか、それまでに聴いていた音とかによって、びっくりするくらい感じ方が変わるんです。なにしろ人間の感覚ですから。そんなに正確なわけがないんです。

で、こんなときに是非とも使いたいのが「VUメーター」と「ピークメーター」です。上の図のメーターはPropellerhead Reasonのメーターで、VUとピークの混合スタイルです。左端から伸びているのがVUで、上の目盛りを使っています。右端に1個だけついているのがピークで、下の目盛りを使います。ピークメーターが0を超えると、一番右端の「CLIP」ランプが点灯するようになっています。

この2つ、基本的にはどちらも音量の状態を確認するための装置なのですが、「VU(Volume Unit)メーター」が反応速度300msといった、比較的人間の聴覚に近いゆっくりした反応を見せるのに対し、「ピークメーター」は反応速度10msといった非常に早い反応を見せ、人間の耳では認知できない「一瞬の電気的な音量増加」も検地し、表示します。つまり、大雑把に言えば、VUメーターは「聴いた感じに近い表示」、ピークメーターは「実際の電気信号の増減」を表示していると考えてください。

さて、これをどう使い分ければいいのでしょう?

基本的には、ミックスされた音楽が、VUメーター上の0dB前後をうろうろ動くのが理想です。音量が最大になる場所で、0dBをはるかに超えるような場合はレベルオーバーです。逆に、0dBまで到達しない場合は、音量が小さすぎます。

で、ここまで調整できたらピークメーターを見てみましょう。全体を通して聴いてみて、一瞬でもピークメーターのCLIPランプ(ピークランプ)が点灯する場合はレベルオーバーです。VUは特にレベルオーバーしていないのに、CLIPランプが点灯する場合もしばしばあります。これを見逃してはいけません。アナログの世界では、場合によっては一瞬程度であればOKだったCLIPランプも、デジタルの世界では「確実に」ノイズになります。CLIPランプが点灯するようなことがあったら、もう一度レベル調整をしなおし、決してCLIPランプが点灯しないような状態にしてください。

ここまで行けば、もう安心・・・ではないのです、実は。その答えは、次章。

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