同期について
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さて、ここまで読んで来て「本当にそんなことでカラオケと歌が同期するの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。「環境も機材も全然違うのに、歌がピッタリ合うの?」と。 非常に厳密に言うとその通りで、理論的に完全な同期はこのワークフローでは取れません。 (「理屈っぽい話になってきたなぁ」と思った方。正解です(笑)。引き返すならここです。なんなら結論を先に書いちゃいましょう。要するに「心配いらない」ってことです。) たとえば、ここに「2本の腕時計」があるとします。夜中の0時ピッタリに時報と共に同時にスタートさせた2本の時計は、しかし、時間が経つとともに徐々にズレていきます。 離れた場所にある2つのシステムについても同じことが言えます。トラックメーカーとボーカリストが使っているのは、上に書いた「2本の腕時計」のようなもので、それぞれ自分のタイミングで動いていますので、完全な同期が取れている状態とは言えません。 プロのスタジオではどうしているかというと、スタジオ内の機材はすべて、マシンルームにある「シンク・ジェネレーター」という同期信号発生装置の信号を受けて同期しています(これを「マスタークロック」または「ハウスシンク」と呼びます)。 例えて言うなら、これは「2本の電波時計」です。電波時計は標準時間送信所から発信される電波を受けて時間を表示します。参照している時間がまったく同じものなので、2本の電波時計は絶対にズレません。 これがないとスタジオ内の機材はそれぞれ勝手なタイミングで動くことになり、これらの機材間で録音を行おうとすると、同期信号のズレによりノイズが入ったり、最悪の場合は動作が止まったりすることもあります。 しかし、今回書いたワークフローでは、行うのは「ファイルの受け渡し」だけです(ここが重要なポイントです)。同期が合っていない2つの機種の間で「録音」ではなく「ファイルの受け渡し」を行った場合、ノイズの発生や動作の停止といった現象は生みません。生まれるのは「ピッチの変化」だけです。それも、おそらく誰にもわからない程度の、非常に微細な「理論的なピッチの変化」です。 タイミングのズレは生まれません(注1)。なぜなら、例えばサンプリングレートが44.1kHzの場合、「1秒間に44100サンプルを再生する」という原理・原則はどのマシンでも必ず同じだからです。問題は、この「1秒」がマシン間で違うということであり、これが結果的に「非常に微細なピッチの変化」を生み出してしまうのです。 しかし、繰り返しになりますが、この「ピッチの変化」は「理論的に言えばそうなる」という程度のものであり、それが大きな問題になることは(少なくとも僕らのようなアマチュアの世界では)まずありません。 それでも心配な方は、一度簡単なファイルでテストしてみると良いでしょう。問題がないと感じたら、早速ネット制作の世界へ飛び込みましょう。
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