モニター環境
モニター環境(視聴環境)について考えてみます。

基本、Nishioka氏の講座(作曲・編曲講座- Basic -ミキシング/マスタリング編 ”確認”)でもとりあげられている内容です。Nishioka氏の講座では何につけ、幅広く語られて いて、間違いの部分は無いと私は考えています。ですからNishioka氏の講義に補足を行うことになります。

−そもそも”モニタ”とは何か−

わざわざ視聴環境のことを何で”モニタ”などと格好つけた言い方にするのでしょう。いえ、別に誰も格好をつけているわけではありません。モニタとは”測 定・観測”の意味だからです。スピーカやヘッドフォン、アンプなど、実際に電気エネルギーを空気の粗密波に変換する部分、<視聴装置>は実に多種多様で す。当り前のことを書いていますが、よく考えて見てください。まず、価格ですが1000円程度で購入できるパワードスピーカから、スタジオ用の1千万円 (工事費別)近いシステムのように、価格のレンジがとにかく広い。また、使用のしかたとしては、補聴器のような小型パーソナルなものから、防災無線スピー カ、巨大なライブのSRシステムまであります。一般家庭用なら防水ラジオ、テレビ、スピーカ一体型メモリプレーヤ(ラジカセ)、しゃべる冷蔵庫や湯沸かし 器の端末、車、そして趣味のオーディオ機器。用途と値段の軸だけでも音を発生させる機器や視聴機器があり<視聴装置>は色々な選択肢の中から選定され、配 置されているのです。

−モニタシステムの選択−

ここで、<視聴装置>を音楽だけを楽しむ機器の範囲に限定します。ここでも多種多様ですね。PC用の小型パワードスピーカで楽しんでいる人もいれば、ほと んどをヘッドフォンやカナル式イヤーフォンで聴く人、ラジカセ型で聴く人、コンパクトステレオやコンポーネントでシステムを組んで聴く人。MIXや録音を するのであれば、こういった商品のなかから「モニタ」と銘打たれたものを使うことを薦めます。特段、銘うたわれていないものの場合、「良い音で聞かせよ う」という「余計な工夫」が盛り込まれていると考えてください。「モニタ」とは測定・観測であるのですから、「良い音は良い音で」「悪い音は悪い音で」聞 こえてくれなければなりません。「悪い音を良い音に」してしまうシステムが多々あるので、こういったものを使ってしまうと、ある視聴装置では良い音でも、 別の視聴装置で聴くと全く意図していない音で聞かせてしまう場合があります。何より、「悪い音を良い音にしてしまう」システムでは、録音やMIXでの問題 点の把握が非常に困難になってしまうのです。「悪い音を良い音に」してしまうシステムでも「モニタ」という表現をとっていますが、それには騙されないよう に。例えばお坊さんみたいな名前の有名メーカがありますが、制作用モニタの観点からすると目的に沿いません。ここのモニタシステムはライブの時に「何が何 でも良い音で聞かせたい、多少の欠点を隠してくれて、お客さんを楽しませたい」というときには向いています。ただし、録音やMIXにおいては欠点を隠して しまいます。正確なモニタによって良い音を作れば、”いかなる視聴装置”においても「良い音は良い音」で聞こえてくれます。モニタに分類されるものの中で すら、それぞれの特徴があり、選定には非常に苦労します。

正確なモニタとは何か?ですが、”測定・観測”装置的に考えて構いません。しかし、スペック的に考えると、良いものを用意したいとなると、かなり高価にな るのは必至です。キリがありません。またモニタの中にも当然、種類というか個性やグレードが存在します。ではどのように選ぶのか?まず、予算の範囲で極力 正確なものを選ぶべきでしょう。見分け方ですが、よく聞くCDなどを現在のご自分の視聴環境で、”よく見聞き”してください。選定の際にお店にCDを持っ ていって、聞かせてもらいましょう。音が”よく見えたら”モニタの素質ありです。次に「派手に聞こえていないか」をよく聞いてください。「よく音風景が見 えるんだけど、極端に派手だな」と感じたら除外します。「おおっ、ピアノのコロンという音があったことに気がつかなかった、雰囲気も大きくかわらないな」 というものにしておくのが無難です。

−モニタの選択を間違えるとどうなるのか−

「派手なモニタで音を作ると、おとなしい音になってしまう。」
「高域が落ちているモニタで音を作ると異様に高域が上がった作品を作ってしまう。」
「高域が極端にブーストされているモニタで音を作ると、高域が下がった作品を作ってしまう。」
「ダイナミックレンジの狭いモニタで音を作ると、視聴装置によってバランスが大きく異なって聞こえる。」
「派手なモニタで音を作ると、とにかく疲れる。音が硬くなる。(硬くなるとは高域が上がることを指します)」
「定位の甘いモニタで音を作ると、MIXで混乱する。結果、視聴装置によってバランスが大きく異なって聞こえる。」

などです。

要はモニタの癖が逆に出るような作品を作ってしまいます。例えばクラブサウンド向けのヘッドフォンで作品を作ると、完成品はなぜかクラブっぽくな い、、、、あたりまえです。

−モニタの工夫−

モニタ用のシステムを無理に用意しなくても、もちろん音楽を作ることは出来ます。持っているものを工夫してみることが大切です。仮に新しいモニタシステム を購入したとしてもこの工夫は継続して必要です。これはNishioka氏の講座にも書いてありますが、なんども聴き直し、持っている色々な機材で聴いて 見ることで、自分のモニタシステムの特性がどのような傾向にあるのかを把握しておくことです。把握の仕方は上述の−モニタの選択を間違えるとどうなるのか −と同じ考え方です。その上で、例えば部屋のスピーカの配置を変えてみるとか、壁の中心に両面テープで1円玉を貼ってみるとか、オーディオマニア的な調整 に入ります。あとは、一番コストパフォーマンスの良い機器のグレードアップは、まずスピーカ・ケーブルを変えて見ることです。家電量販店やホームセンター で千円/m程度のスピーカケーブルを買ってきて付け替えて御覧なさい。10万円のコンパクトステレオが30万円〜50万円のステレオシステムに化けます。 ヘッドフォンやカナル式イヤーフォンは変えようがありませんが、首の向きに気をつけてください。多分、人によって違いがあるかもしれませんが、下を向くと 低音が聞こえなくなりませんか?(私だけ?)とにかく、モニタを基準に音を作ってみて、色々な場所や時間、システムで何度も聞いて、自分のモニタの特性を 把握することです。

−スタジオには、何故何台ものスピーカがあるのか−

スタジオでは概ね2つ、ないし3つの視聴機器を使ってモニタリング比較を行います。

<ラージモニタ>:大きくて見た目が 派手なスピーカです。主に録音のときのノイズチェックや、調整時の微細なところを聴く目的です。小音量ではスピーカ自体が”鳴らない”ので、眠気が出てく るほど大音量で聴きます。とても大きな音の中だと、人間、眠くなります。

<スモールモニタ>:調整卓の上くら いに載っている家庭向けサイズのモニタです。バランスをみたり、音を小さくしたときの変化をみます。

<ミニモニタ>:もう一つ調整卓の上 くらいに載っているラジカセサイズのスピーカです。目的はスモールと同じです。

<ディマー>:これは卓側の機能です が、ラージ並びにスモールで音量を一定値下げるボタンです。プロはモニタの音量を細かく触りません。なぜならば、モニタ音量を変えてしまうとバランスを見 失うからです。いわゆるボリュームプリセットで確認します。

ラージ、スモール、ミニとディマーの組み合わせて6つのモニタ状態を作り、それぞれバランスや音の崩れが無いかを確認します。意外だと思われるかもしれま せんが、ノイズやコンプレッサのかけ過ぎ、ボーカルの大きさの状況はスモールやミニで発覚します。ラフなバランスはスモールでとって、ラージで微調整する というパターンが多いですね。

私の場合はたまたまですがNishioka氏と同じヘッドフォンで、カナルイヤーフォンはSONYのNUDA(形式名忘れました)、あとはAIWAのパ ワードスピーカですが、信用していません。これはモニタ目的ではないからです。ヘッドフォンをかけっぱなしだと疲れるからです。

ラージモニタ:SONY MDR-Z900
スモールモニタ:SONY MDR-Z900/SONY NUDA
ミニモニタ:AIWA パワードスピーカ

という使い分けです。

他に大型テレビに持っていって聴いたり、車やダイニングにおいてある別PCで聴いたり、会社にあるオーディオシステムでちょっと聞かせてもらったりしてい ます。

また、オーディオインターフェースはPreSonus製を使っています。なぜかというと、ボリューム(正確にはアッテネータ)が、クリック式なので、常に 正確にモニタ音量を選択できるからです。スモールの時は4クリック目、ラージモニタリングのときは6クリック目、ミニのときは2クリック目というように、 いつでも絶対音量を一定にして作業できるからです。このようにモニタを使うときは音量に注意してください。モニタ音量をコロコロ変えるとバランスも音も変 わります。この影響は非常に大きいです。

最後に余談ですが、オーディオのプロとマニアは全く別物だと考えてください。プロ=マニアである人もいますが90%のプロは違います。プロに対してオー ディオマニア的な質問をする人がいますが、人種が違うのです。失礼な場合があるので気をつけてください。まずコストに対する考え方が全く違います。また目 的が違い過ぎます。自分が楽しむために知識や経験を積む人がマニア。仕事のためにそれを行うのがプロであり、当然ながら商売なのでコスト(対費用効果や耐 久性)に対する考え方が違いすぎます。取り扱う音も、プロは自分の好みに対しての取り組みではありませんから、マニアとは別物だと思ってください。もちろ ん、プロの中にもオーディオマニアは居ますよ。普通に。でもその人の中でも別世界なんです。ちなみに私はオーディオマニアではございません。使いこなしに はこだわりますけど。上述にありますが元プロだというわりに、モニタシステムはしょぼすぎるでしょう?元プロだというのにまともなステレオシステムを所有 していないのです。別に変だとは思いません。自分できちんと把握さえしていれば、このくらいのシステムで十分であると考えています。そりゃあお金に余裕が あればもう少しモニタに奢ってやりたいなと思いますが、それよりPCをリニューアルしたり、ソフトをアップグレードしたり、何かヒューマンインターフェー スを追加するほうが、投資効果があると判断するのです。ちなみに現在所有の音楽制作システムにかけたコストは7、8万円にすぎません。しかも10年くらい の間にです。これから考えると私の作った音はコストパフォーマンスが結構、高いでしょう?そこが儲けに繋がるのよねぇ。

どお?Nishiokaさん。

(おっしゃる通りっす!(返:Nishioka))
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