まだ我慢!!」

この曲を聴いてみて下さい。

モーリス・ラヴェルの組曲「鏡」の第4番「道化師の朝の歌」の一部です。

前半4小節と後半4小節で、メロディーラインはまったく同じです。しかし、この色彩感はどうでしょう!

クラシック曲ですから、原曲にはもちろんコードネームなどついていませんが、付けるとすると以下のようになるでしょう。

Cm7(9) - Cm7(9) - Gm7(9) - Gm7 (9)
Cm7(9) - F7(9, 11) - B♭M7 - E♭M7/B♭

前半4小節では、あえてGmのサブドミナ ントからトニックへの移動だけで済ませま す。9thのテンションが入っているので「甘み」も感じられますが、基本的にはあまり表情に動きがないと言ってもいいでしょう。言葉で言うなら「凛とした 寂寥感」と言えるかもしれません。つまり、「我慢」の場所です。

後半4小節ではCm7を平行 調であるB♭のドッペルドミナントと して扱い、ツー・ファイブを用いて、平 行調のメジャースケールに移行しています。F7からB♭M7のとろけるような甘さが、前半4小節との対比も相まって非常に美しく映えています。これは、前 半4小節の「我慢」が効いているのです。始めからこれをやってしまうと、後半4小節の甘さが引き立たないのですね。

道化師が窓の外で恋人に歌う愛の歌です。そんな情景を想像すると、この曲の寂寥感と甘さがさらに深いものに感じられるでしょう。しかし 大切なのは、「そんな物語の背景を知らなくても、同じ感情を感じられる」ということなのです。それって、素敵なことだと思いませんか?

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